NFTが人気を集めるようになり、取引している人やこれから取引したい人は多いと思います。確かにNFTは投資対象として魅力的ですが、著作権・所有権をめぐってトラブルになることもありまして、注意も必要です。
本記事では、NFTの著作権・所有権の問題について事例を用いながら共有していきます。知らずに取引をしていると、最悪の場合は訴訟に発展してしまう可能性もありますので、最低限の知識を身につけておきましょう。
●この記事の結論
・著作権とはコピーしたり改変をしたりする権利
・一般的にはNFT取引で著作権は移転しない
・NFTの無断転載で訴訟になる可能性もある
NFTでトラブルを避けるためにも、取引をする前に条件をチェックするなど自分でできる対策もありますので、参考にしてください。
NFTの著作権とは?所有権との違いを解説
著作権 | 所有権 | |
---|---|---|
定義 | 「著作物の複製、翻案、譲渡、放送、インターネット配信等の利用行為」を行う権利 | 「物を自由に直接かつ排他的に支配」できる権利 |
NFTへの適用 | 適用される | 適用されない |
まずは、「著作権」「所有権」の言葉の意味を理解しておきましょう。
NFTの著作権はコピーや改変を加える権利
「著作権」の定義は以下の通り。
「著作権は著作物を保護するための権利です。著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。」
引用元:著作権とは | 日本弁理士会
NFTは「思想又は感情を創作的に表現したもの」と認めることができるので、多くのNFTが著作物に該当し著作権が適用されます。著作権を保有していると「著作物の複製、翻案、譲渡、放送、インターネット配信等の利用行為」などを独占的に行うことができることになります。
無断転載などの著作権を侵害した場合は、損害賠償になるだけではなく刑事罰の対象になる可能性もあり、リスクがあります。「知らなかった」では済まされないので注意が必要です。
NFTに所有権は適用されない
「所有権」の定義は以下の通り。
所有権は、物を自由に直接かつ排他的に支配できる権利であり、所有者は、法令の範囲内で所有物を自由に使用し、収益し、又は処分することができる(民法第206条)。
引用元:JICA
「デジタル所有権」という言葉がよく使われているように、「NFTを購入すること=NFTを所有すること」という考える人が多いです。しかし、厳密には所有権は有体物(形のあるもの)にしか適用されないため、NFTに所有権は適用されません。
ただ、最近ではリアルなアートとNFTに共通点が多いことから、所有権をNFTに適用してもいいのではないかという議論も行われています。
「NFTアート」と「アートNFT」の違いを理解することが重要
NFTの著作権を理解するためには、「NFTアート」と「アートNFT」の違いを理解しておくことが大切です。かなり似ている言葉ですが、大きく違う意味を持つ言葉です。
「NFTアート」はNFT化されたアート作品そのものを指しており、一方の「アートNFT」は取引されるトークンであるNFTを指しています。僕たちが取引できるのは作品そのものではなく、そのNFTですので「アートNFT」を売買することになるわけですね。
ですので、作品そのものに付随する権利は、NFTを購入したとしても譲渡されず、製作者に残ります。NFTを購入したことで作品そのもの(NFTアート)を手に入れたと勘違いする人が多いことで、著作権関連のトラブルにつながっているのです。
NFTを購入しても著作権は移転されない
以上の話をまとめると、「NFTを購入しても著作権は移転されない」という結論になります。購入すると全てが自分のものになった気持ちになるかもしれませんが、実は著作権は制作者が持っていることを覚えておきましょう。
NFTを保有していることと著作権を保有していることは、全く別のことなのです。
このことを把握しているだけで、「自分が購入したNFTならどんな使い方をしてもOK」という勘違いがなくなり、トラブルになる可能性が減ると思います。
NFTの著作権上やっていいこと/ダメなこと
NFTの著作権上、やっていいこととダメなことをまとめて紹介します。一般的に認められている範囲の話ですので、最終的な判断は各取引の規約に従ってください。
NFTの著作権上やっていいこと
- 転売
- SNSのプロフィール画像に設定する
- NFTを保有していることを公言すること
この辺りの行為は基本的に認められているようです。NFT取引で利益を出そうとしている人が多いと思いますが、そういう場合に転売して稼ぐのは問題なし。
一部のNFTは、コミュニティーにアクセスするための鍵として使われている場合もあるので、SNSのプロフィールに設定したり公言したりすることは問題ないという認識が一般的です。
NFTの著作権上やってはダメなこと
- 複製(コピー)
- 改変を加えること(イラストの色を変えるなど)
- 無断転載(ネットに無断でアップロードするなど)
- 商用利用(Tシャツ等のグッズに印刷して販売するなど)
- 他社の作品を勝手にNFT化して販売すること
普通にNFTを売買して稼ぐ上では必要のないことですが、軽い気持ちで無断転載などしてしまう場合もあるようです。「著作権は作成者に帰属している」ことを再度認識しておきましょう。
NFTの著作権問題を避けるための対策
NFTに関しては、まだ判例の少なく完璧にトラブルを避けることは難しいかもしれませんが、著作権問題のリスクを少しでも減らすための工夫はできます。以下で対策を紹介します。
NFTの取引前に契約条件をしっかり確認する
NFTを取引する時には、契約条件をしっかりと確認することがとても重要です。基本的にはNFTを売買するプラットフォーム(マーケットプレイス)上の規約に従って取引が行われます。マーケットプレイス上で取引をしている人は、マーケットプレイスが定める規約に同意していることにもなるので、規約を確認しておけば何かトラブルがあっても対抗することもできます。
マーケットプレイスごとに異なる規約を採用しており、マーケットプレイスで一律に規約を設定していることもあれば、販売者が取引ごとに設定することができる場合もあるため、取引前の確認が必須ですね。
マーケットプレイスでは以下のような利用規約が設定されています。
作成者とは、本サービスにて取扱される商品を作成し、当該商品に関する著作権を有 する方、著作隣接権の権利者又はその管理委託を受けている方を指します。
引用元:ポリシー・規約の一覧 – Adam byGMO サポートページ
当社コンテンツに関する著作権、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、肖像権その他一切の知的財産権及びこれらの権利の登録を受ける権利(以下総称して「知的財産権」といいます。)は、当社、当社がライセンスを受けているライセンサー又は出品者に帰属し、ユーザーには帰属しません。
引用元:NFTStudio
わからないまま勝手に二次創作・無断転載をしない
契約条件を確認せずに購入してしまった場合でも、改めて規約を確認しましょう。「よくわからないけどいいや!」と勢いで二次創作や無断転載をしてしまうと、取り返しのつかないトラブルに発展してしまうかもしれません。
著作権侵害は想像以上に重い罰が待っているので、軽率な行動はキケンです。
NFTの発展には著作権の法的整備が重要
NFTを取引する上で、著作権のことを気にしなくてはいけないのは大変なことですが、著作権はとても重要です。なぜなら、著作権が認められなければ、NFTの価値が暴落してしまうからです。
NFTに著作権がなく自由に商用利用されると、NFTの製作者にとっては作品を作るメリットが小さくなります。自分の作品が無断で使われるのであれば、わざわざNFT化して唯一性を持たせる意味がないですよね。「この世に1つしかないアートです!」と売り出しても、購入者がコピーして、それが流通してしまえばNFTの存在意義がなくなってしまいます。
ですので、NFTが今後も発展していくためには、著作権の法整備が進むことが重要です。現状はまだ判例も少なく、専門家によっても意見が分かれる部分が多いです。NFTは新しい分野であり明確な法的記述がないからです。
今後、NFTが普及するにつれて法整備がしっかり進めば、よりNFTの発展につながっていくのではないでしょうか。
著作権等の法的整備が完璧ではない今こそ稼ぐチャンスもある!
以上、NFTの著作権について解説してきました。記事のポイントとしては以下の5点でしたね。
- 著作権とはコピーしたり改変をしたりする権利
- NFT取引で著作権は移転しない
- 所有権はNFTには適用されない
- NFTの無断転載で訴訟になる可能性もある
- 著作権の法的整備が進むことでさらにNFTが発展する
NFTの著作権問題は、理解していないと大きなリスクになります。法整備が追いついていないので、確定的な判断ができないのも難しい点でしょう。
しかし、法整備ができていないということは、まだNFTが発展途上である証拠でもあります。少しずつ認知度が増してきているとはいえ、日本ではNFTのことを知らない人が多い状態です。ですので、今のうちにNFTの知識を深めて取引を始めることで、将来的に大きな利益を得ることができるかもしれません。
NFTで稼ぐ上で参考になる記事を貼っておきますので、ぜひご覧ください。
コメント